声帯を効果的に働かせる身体の使い方

声帯への負荷

発声においてその負荷を声帯だけにかける事は声帯を痛める事に直結するばかりか、良い声を手に入れるためにも賢明な手段とはいえません。
声帯にはなるべく負荷をかけずにデコルテから上はなるべく自然な状態を保っておくのが理想です。
しかし、声帯の部分で述べたように、声帯の中の声帯靭帯は外からの受動的な働きかけに良ってのみ理想的な発声機関としての働きをするので、なにがしかの運動力が声帯靭帯にかからなければなりません。

声帯の筋肉を伸ばして振動させる発声方法

この時に必要になってくるのが身体の使い方です。声帯靭帯に声帯まわりの筋肉で働きかけるのではなく、身体全体の筋肉を使った働きかけをして、声帯を長く薄く伸ばし、理想的な振動を手に入れる事が出来るのが理想的な発声方法です。
多くの人はこの作業の時にどうしても声帯まわりの筋肉を緊張させて声帯を伸ばそうとしてしまうので、ギューっと首を締め上げたような、苦しそうな発声になってしまいます。声帯まわりの筋肉を使って声帯靭帯に働きかけようとする事は声帯を理想的に長く薄く伸ばす事にはつながらないばかりか、逆に声帯が収縮する方向へつながってしまう事が多々有ります。声帯が収縮する事はナチュラルな発声の妨げになるものなので、ぜひ避けたいところです。
そこで、声帯まわりの筋肉に頼らず声帯靭帯へ受動的に働きかける最良の手段として、身体全体を使った方法が選択されるのです。

呼吸のために使っていた身体の収縮運動から発声へ

腹式呼吸の部分で触れたように、歌を歌うための呼吸法で、すでに私たちは体全体をつかった運動の予備段階は行っています。ここからは呼吸のために使っていた身体の収縮運動を発声の段階へ進めていきます。
腹式呼吸で呼吸をはいた時に腹部がぐっとしまっていく感じがするのは横隔膜が上がり内蔵を押し上げていっているからですが、横隔膜が上がっている感覚をそのままに声帯靭帯へ繋げてしまうと、声帯靭帯はうまく引っ張られてくれません。物理的には横隔膜は上がっていっているのですが、感覚的には逆方向へ下がっていっていると感じる方が声帯靭帯を長く薄く引っ張るためには効果的です。
また、この時に脊髄をそって行くような背面の部分(尾骶骨から首の付け根)を意識的に一本につなげて、この部分をぐっと下げて行くように感じてあげるのも体幹を上手につかうための一歩となります。横隔膜があがり、声帯靭帯が萎縮してしまうのを体全体で下方向へひっぱり留めておいてあげる事が、発声においては重要なポイントになっていきます。

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